絵本「金のさかな」 [10~15分]
ロシアのおはなしです。
おじいさんが金のさかなを助けた。
その金のさかなは、何でもお望みの物をさし上げますと言う。
ひとのいいおじいさんは、お礼なんかいらないと魚を返す。
ところがこのおじいさん、とんでもなく欲張りな妻を持っている。
おばあさんはほしい物が簡単に手に入ると知ると、
欲を次々にエスカレートさせていく。
おじいさんはそんなおばあさんの欲をとめる術を知らない。
ついに海の君主になり、金のさかなを家来にしたいと言い出す。
怒った金のさかなは、ふたりからすべてを取り去ってしまう。
昔話として、めずらしい話の展開ではありませんが、惹かれるものがあります
人間の欲を戒めるストーリーでありながら、
押し付けがましい道徳話になっていないところが気に入っています。
「次はどうなるんだろう」という聞き方ができますので
低学年から高学年まで、幅広く読み聞かせに使えると思います。
この絵本は、話だけでなく、絵がとても気に入っています。
色の鮮やかさ、舞台を見るような水平のラインを強調した構成、
人の顔の表情や海の表情がとても印象的です
絵本「3びきのかわいいオオカミ」 [10~15分]
3びきのこぶたのパロディー版?です。
3びきのこぶたとおおかみの話が
3びきのちいさなオオカミと わるいおおブタの話に変わっています。
そのうえ、現代風にアレンジされています。
オオカミたちの家は レンガやコンクリートや鉄骨になり
おおブタは ハンマー、電気ドリル、ダイナマイトで家を破壊することに。
力と力の対決は、エスカレートするばかり…。
違った解決策はないかと考えたオオカミたち。
ステキな解決策を思いつきます。
(地球上のあちこちで起っている紛争も、こんな解決策があるといいのですが…)
読み初めてすぐ、子どもたちはパロディーに気づき笑い出します。
わるいおおブタの破壊力のすごさをおもしろがるのは男の子。
平和な結末にホッとするのは女の子。
平和過ぎて物足りない子もいるようです。
ストーリーに含まれた、人間社会への痛烈な批判に気づいてくれると嬉しいですが。
奥の深さを感じる絵本です。
絵本「ワニになにがおこったか」 [10~15分]
ロシアの絵本です。
文化圏が違うとやはり
絵本の雰囲気も違います。
アニメーションのシナリオも書く作者ということもあるのでしょうか。
軽快に話が展開していきます。
でも、テーマは重い。一読後、ズシリと来ました。
そしてくり返し読んでも、テーマの重さは消えません。
もし、ふつうでない子が生まれてきたら…
世間体、育てられないかもという不安、
普通の親子だったら得られるはずのふつう幸せ(?)を
あきらめなくてはいけないという絶望感。
他人のことだったら笑えるけど、自分だったら…というくだりには
ドキッとさせられます。
立ちはだかるいろいろな壁を乗り越えながら懸命に子育てするワニのガーパ。
ほんとうに健気です。
話の結末がこれでいいかどうかは、意見の分かれるところかもしれません。
子どもたちの年齢や成熟度にもよると思います。
読み聞かせの中で、子どもたちの反応を楽しみたいと思います。
絵本「そばせい」 [10~15分]
絵本「ロバのシルベスターとまほうのこいし」 [10~15分]
◆◆ぼくを見つけて~!◆◆
ロバのシルベスターとまほうのこいし (評論社の児童図書館・絵本の部屋)
- 作者: ウィリアム・スタイグ
- 出版社/メーカー: 評論社
- 発売日: 1975/01
- メディア: -
親子の愛情を描いたこの絵本、
親、または子のどちらの立場で読んでも心温まるストーリーです。
子の立場から読むと・・
退屈な日、ちょっと冒険がしてみたかった。たまたま拾った石は魔法の小石。
ライオンが来たのであわてて「岩」になってしまったら元に戻れない!
とうさん、かあさん助けて~
数ヶ月後…元の姿にもどれないまま岩になってしまうの?と
思っていたら、なんと父さん母さんが近づいてきた。
気づいて~!ぼくはここだよ~! と言いたくても声が出ない。岩だもの。
もうだめかとあきらめかけた頃、ひょんな拍子にもとのロバに戻れた!
父さん、母さん、ありがとう!
親の立場から読むと・・・
ある日突然、一人息子が失踪! どうして? どこへ?
隣近所をたずねても、警察に届けても、息子は見つからない。
何ヶ月も悲嘆にくれて暮らしている。
ある日、父さんが、「こんなことではいけない。立ち直ろう!」と
お母さんをピクニックに誘い出す。
ランチを食べようと座った岩。「あの子が戻ってくれたら~」と
思った瞬間。岩が忽然と消え、息子がそこに!
こんな嬉しいことったらありゃしない!
親と子、愛し合っていてもすれ違ってしまうことがあるものです。
この絵本の「岩」を子どもの反抗期と見ることもできるでしょう。
絵本「どうぶつさいばん ライオンのしごと」 [10~15分]
◆◆地球上に共に生きる、野生動物たちのことを考えてみませんか?◆◆
ひと言で言えば弱肉強食の野生の世界について、理解しやすく書かれた絵本です。
ライオンがヌーのお母さんを殺して食べました。
ハイラックスの裁判長のもと、裁判が始まります。
訴えたヌーの弁護士はゾウ。訴えられたライオンの弁護士はオオミミギツネ。
それぞれ証人を立て、それぞれの言い分を申し立てます。
「献身的なお母さんを殺されたヌーの子がかわいそう」から始まり、
それぞれの動物たちの立場からの証言で、野生の仕組みが明らかになっていきます。
病気で弱ったものを肉食獣が食べることにより、
その病気の菌がばら撒かれることを防ぎ、結局は野生の動物たちの保護になっている。
ですから、判決は「ライオンは無罪」です。
映像や本から知識を得ているものの、
それぞれの立場での証言は、ひと言、ひと言、心に響き、
命の重さをずしりと感じます。
前回、小学校の中学年の読み聞かせに使いました。
読み終わってクラスの様子を見ると、真剣な、そしてやや悲愴な顔、顔、顔・・・
う~んちょっとテーマが重すぎたかなぁ、とやや後悔。
絵本「オットー戦火をくぐったテディベア」 [10~15分]
題名からもわかるように、戦争を扱った絵本です。
1匹のテディベア、オットーは、ユダヤ人の子デビッドへの誕生日プレゼントでした。
ところがデビッドがユダヤ人収容所へ送られることになり、
友達のドイツ人の子オスカー、アメリカ兵(オットーは命の恩人?になります)、その兵隊の帰りを待っていた娘、ホームレスと見受けられるおばあさん、骨董屋へと、次々に渡っていきます。
そして何十年かの時が流れ、ついに年老いたオスカーに見つけ出され、再びデビッドのもとへ戻ります。
デビッドの両親は収容所で殺され、オスカーの両親も戦争で亡くなり、
アメリカ兵は戦争で負傷しました。(このときにテディベアのオットーも傷つきます)
オットーをゴミ箱に投げ込んだ不良少年グループも、
ホームレスのおばあさんも戦争の犠牲者かもしれません。
戦争というものは、実に様々な人々の心を傷つけていくものです。
ぬいぐるみに視点をおくことによって、
ふつうに生活している人々が戦争に巻き込まれていくことがどういうことかを
戦争を知らない私にも実感させてくれました。
絵本「王さまと九人のきょうだい」 [10~15分]
◆◆あの手この手で苦難を乗り切るお話◆◆
中国の民話です。
老夫婦が、池にすむ老人から9人の男の子を授かりました。
名前は「ちからもち」「くいしんぼう」「はらいっぱい」「ぶってくれ」
「ながすね」「さむがりや」「あつがりや」「切ってくれ」「みずくぐり」。
9人は外見はそっくり。しかしこの名前の通りの特技を持って大きくなります。
「ちからもち」がその特技を生かし王様を助けたにもかかわらず、
そのわるい王様は「ちからもち」を信用せず、次から次へと難題を課していきます。
そっくりの9人、難題ごとにそれにあった特技を持った兄弟の一人が
王様の前に出て行き、難を乗り切ります。
そしてとうとう最後の「みずくぐり」によって、悪い王様は大川の波にのまれ流されていきます。
悪い王様がいなくなり、人々は平和に暮らしたというおはなしです。
しっかりした、わかりやすい昔話だと思います。
この9人の名前は、それぞれの特技をよく表しているため、話をわかりやすくしていますし、
音の響きがおもしろく、子どもたちの笑いを誘います。
絵本「かえるの平家ものがたり」 [10~15分]
◆◆かえるの琵琶の語りにうっとり?◆◆
不思議な絵本に出会いました。
緋縅鎧のかえるが弓を持ちバッタにまたがっている表紙に惹きつけられました。
絵巻物を思い起こさせるような丹念に描き込まれた絵に感動。
ベースになっているのはもちろんあの平家物語。
語りは琵琶をかなでるしわくちゃなおじいさんがえる。
頼朝、義仲、巴御前、牛若丸も登場する。ただし全員カエル。
平和な源氏沼に侵入者あり。にわかに戦の準備を整えるカエルたち。
戦う相手は?・・・・平家ネコ。
負け戦になるかと思ったところを助けたのが牛若丸の知恵。ネコは水が苦手。それに対抗するのは「義経の八そう飛び」ではなく、牛若丸かえるの蓮の葉跳び。牛若丸かえるにつられた猫が、やぶれた蓮の葉に飛び乗り、水の中へ沈んでいく。
リズムある短く、やさしいことばで話がつづられていきます。誰かに読んでもらいながら、じっくり絵を鑑賞したい絵本です。
絵本「2ひきのいけないアリ」 [10~15分]
◆◆新しい訳で生まかわったオールズバーグの絵本◆◆
「くいしんぼうのあり」クリス・バン・オールスバーグ作 きじまはじめ訳 1989年初版 ほるぷ
「2ひきのいけないアリ」C.V.オールズバーグ作 村上春樹訳 2004年初版 あすなろ書房
この2冊の原作は同じ絵本です。ストーリーは2ひきのアリが経験した冒険話とでもいいましょうか。
ありの視点で描かれた絵は、とても不思議な雰囲気です。人の口にコーヒーとともに飲み込まれそうになるアリ。トースターの中から、パンと一緒にはじけ出されるアリ。流しのディスポーザーの中で生ゴミといっしょに回転するアリ。絵だけ眺めても、十分に楽しめる絵本です。
「くいしんぼうのあり」は、幼児でも理解できるようにかなり意訳されていたようです。そのためか、何かつかみ所がない印象をもっていました。
昨年出版された「2ひきのアリ」を読み、少し納得しました。このストーリーは、ある意味で難しいです。とても幼児向けの絵本とは思えません。ただの冒険話と読んでしまうか、社会批判・・・ボスに逆らわず、決められたことだけを繰り返すことに幸せを感じている人々への批判・・が含まれていると読むか、読み手次第かもしれません。女王様がどこかの独裁者に見えてきたりもします。なぜ冒険を終えた2ひきのアリは、女王様の下にいることのほうがより幸せと感じたのでしょうか?冒険を終えて我が家に戻ってきたときの満足感とは違うものを感じます。考えすぎでしょうか。
声を出して読んでも、15分弱。しかし、読者に重いテーマを提示しているようにも思え、大人にとっても考えさせられる絵本です。
原作を読んだことがないのですが、おそらく村上春樹さんは、原作に忠実に訳されたと思います。
いつか、原作を読んでみたいものです。