絵本「2ひきのいけないアリ」 [10~15分]
◆◆新しい訳で生まかわったオールズバーグの絵本◆◆
「くいしんぼうのあり」クリス・バン・オールスバーグ作 きじまはじめ訳 1989年初版 ほるぷ
「2ひきのいけないアリ」C.V.オールズバーグ作 村上春樹訳 2004年初版 あすなろ書房
この2冊の原作は同じ絵本です。ストーリーは2ひきのアリが経験した冒険話とでもいいましょうか。
ありの視点で描かれた絵は、とても不思議な雰囲気です。人の口にコーヒーとともに飲み込まれそうになるアリ。トースターの中から、パンと一緒にはじけ出されるアリ。流しのディスポーザーの中で生ゴミといっしょに回転するアリ。絵だけ眺めても、十分に楽しめる絵本です。
「くいしんぼうのあり」は、幼児でも理解できるようにかなり意訳されていたようです。そのためか、何かつかみ所がない印象をもっていました。
昨年出版された「2ひきのアリ」を読み、少し納得しました。このストーリーは、ある意味で難しいです。とても幼児向けの絵本とは思えません。ただの冒険話と読んでしまうか、社会批判・・・ボスに逆らわず、決められたことだけを繰り返すことに幸せを感じている人々への批判・・が含まれていると読むか、読み手次第かもしれません。女王様がどこかの独裁者に見えてきたりもします。なぜ冒険を終えた2ひきのアリは、女王様の下にいることのほうがより幸せと感じたのでしょうか?冒険を終えて我が家に戻ってきたときの満足感とは違うものを感じます。考えすぎでしょうか。
声を出して読んでも、15分弱。しかし、読者に重いテーマを提示しているようにも思え、大人にとっても考えさせられる絵本です。
原作を読んだことがないのですが、おそらく村上春樹さんは、原作に忠実に訳されたと思います。
いつか、原作を読んでみたいものです。
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